日本マルタ友好協会 元会長 山本 勝美
アベラ大統領(右)に記念品を贈る山本会長(当時)
地中海の真ん中に浮かぶ島
マルタ島は、地中海の真ん中に真珠のように浮かんでいます。そこは、降り注ぐ陽光と青い海に包まれた常夏の島です。そして世界で最も安全な国の一つに数えられています。
世界最古の巨石神殿と地下神殿が島のあちこちに点在しています。島の中央には、古都イムディーナが畠の真ん中にそびえています。「静寂の都市」(Silent City)と呼ばれる通り、静かで気品の漂う町です。イムディーナを出て車で走ると、ローマ時代の水道橋が街路に沿って何キロも続いているのに気が付きます。初めは高速道路と勘違いしましたが、マルタの水道橋は旧ローマ帝国世界では最も良く保存されているのです。首都ヴァレッタに着くと、そこはオスマントルコの攻撃を防御するために築かれた城塞の町です。全館大理石のマルタ騎士団長の宮殿は、中世時代のシンボルです。廊下の両側には、騎士団の近衛兵さながらに甲冑が槍を持って立ち並んでいます。そこを歩くとき、人は中世の世界に吸い込まれてしまいます。マルサシュロック湾は、島の南端にある穏やかな漁村ですが、数ある歴史的な出来事を秘めています。かつてここからオスマントルコが上陸しました。でも現代では、アメリカのブッシュとソ連のゴルバチョフが、この湾上に船を浮かべて「マルタ会談」を開き、戦後世界の冷戦構造を地中海に廃棄したと称されています。このように小国家マルタは、世界の平和に歴史的な貢献をしています。
牧歌的な田園の島ゴゾ
さてフェリーで30分、ゴゾ島を訪ねると雰囲気は一変します。「時間が止まる島」と呼ばれています。中心部に建つチタデル城の屋上に立つと360度の視界が開けてきます。その景観は牧歌的な田園風景そのものです。中世ヨーロッパの農村が、今なおここには息づいています。晴れた日には、ゴゾ島の北端からシチリア島も見えます。この平和な島の裏通りでは、ドアにカギを付けたまま外出しています。20年前に初めてマルタ共和国を訪ねたとき、未知の島ゴゾの、のどかな雰囲気に触れてすっかり魅了されたものです。マルタ・ゴゾの史跡と景勝地をめぐっていると、訪ねる旅人の心は癒され、豊かな感性が育まれていきます。先史時代から現代に至るまでの建造物と名所旧跡は、島のここかしこで人々の家屋や宅地、畠と併存しています。マルタの人々は、5500年の歴史的な遺跡と隣り合わせで暮らしているとすら言えるでしょう。マルタの人々は外国人客に親切ですし、温かい態度で接してくれます。写真を取ろうとすれば、すぐ立ち止まってくれますし、道を尋ねると丁寧に教えてくれます。それは、古来より文明の交差路として多くの異民族と出会ってきた歴史が背景にあるからです。
自立と平和を愛好する国民
マルタの人々は2千数百年の間、くり返す大国の支配に耐えながら今日まで生き抜いてきました。地理的位置と良港に恵まれていたため「マルタを制するものは地中海を制する」とすら言われてきました。しかし現代に至って、1964年にイギリスから独立し、全外国軍事基地を撤去しました。のみならず、東と西の、そして北と南の平和の架け橋としての役割を果たしてきました。つまり、米ソの、そしてヨーロッパとアラブ・アフリカ諸国との橋渡し役を自ら任じ、国際社会で平和のために寄与してきました。
2004年にはEUに加盟、またユーロ・地中海会議を主催し、広くヨーロッパ、地中海の諸国と連携しています。
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日本マルタ友好協会は1990年に創立され、微力ながら20年にわたって日本とマルタの友好関係のために尽くして参りました。両国間の国際交流の中で、私たちはマルタから多くのことを学びました。5500年に及ぶ悠久の歴史と世界遺産は独自の文化を擁しています。現代では、第2次大戦当時ナチス・ドイツとファシスト・イタリアに完全包囲され、破壊されましたが屈せず、戦後は植民地支配から独立し、全方位外交を堅持してきました。このような自立精神と平和を愛好する国民性は、今日の日本にとっても貴重な教訓を示しています。当友好協会は、今後も、互いに地球の反対側に位置する両国の友好関係を深め、実り豊かな親善交流を築いていきたいと願っています。
当協会の会員資格は、マルタ共和国及びマルタの人々と友好関係を深めること、また当協会に集う仲間たちと親善交流を進めることに賛同する心のみです。
皆様には、どうぞお気軽に当協会にご参加下さいますようご案内申し上げます。
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